2022年4月5日の世界のできごと

マリ北部紛争

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、3月下旬にマリ共和国軍および外国人戦闘員が、推定300人の民間人およびイスラム武装勢力とみられる男性をマリ南中央部のムラ(Mourrah、あるいは Moura または Mora)で即決処刑したことを発表した(HRWThe Guardian)。 複数の情報源から、外国人戦闘員はロシア人とみられる。

マリでは、リビアに渡り Muammar al-Qaddafi 大佐のために戦った1トゥアレグ族が十分な武装をもってマリに帰還し、2012年1月からマリ北部で反乱を起こしたことに端を発し、イスラム武装勢力や外国勢力も介入する紛争が続いている2

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界各地に約280名の多国籍で多様なバックグラウンドをもつ専門家を有している非営利の国際人権組織3で、世界約90カ国の人権状況についての報告書を毎年100本以上発表している。

ブルキナファソにおけるジハード主義者の反乱

アフリカのブルキナファソ北部において、83歳の米国人修道女が武装勢力によって誘拐されたことを地元司教が発表した(Reuters)。

ブルキナファソでは、2015年から政府とイスラム武装勢力による内戦が続いている4

ナイジェリア盗賊紛争

ナイジェリア中北部にあるカドゥナ州で、銃で武装した集団が軍事基地を襲撃し、15名のナイジェリア兵士を殺害、12名以上が負傷した(Reuters)。

ナイジェリアでは2011年から弱い政府、若年世代の失業、貧困、格差から盗賊が急増しており、紛争が続いている5

キヴ紛争

コンゴ民主共和国における国際連合平和維持部隊(United Nations Organization Stabilization Mission in the Democratic Republic of the Congo, MONUSCO)によると、ネパール人の平和維持部隊員がコンゴ東部で CODECO のメンバーとみられる民兵に殺害された(Reuters)。

キヴではコンゴ民主共和国軍(Forces armées de la république démocratique du Congo, FARDC)とルワンダ解放民主軍(Forces démocratiques de libération du Rwanda, FDLR)による紛争が続いており、MONUSCO も介入している6

米国におけるトルネードの発生

米国南部でトルネードが発生し、少なくともテキサス州で1名、ジョージア州で1名が死亡した(ABC NewsThe Weather Channel)。 アメリカ国立気象局(National Weather Service, NWS)は、米国南東部サウスカロライナ州のアレンデールとシカモアにてトルネード緊急事態(tornado emergency)7を発令した。トルネード緊急事態はトルネード警報より高いレベルのもので、発令されることは稀である。

ハンガリーにおけるトラックと列車の衝突事故

ハンガリー南部でピックアップトラックが列車に衝突し、5名が死亡、10名以上が負傷したと警察が発表した(Reuters)。 死亡した5名はトラックに乗っていた。負傷者はトラックと列車の乗客。 トラックは赤信号を無視して線路に乗り上げたと言われている。

上海における COVID-19 パンデミック

上海の全住民を対象とした COVID-19 検査の後8、中国は上海のロックダウンを延長した(NBC News)。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻

ウクライナ東部攻勢(マリウポリの戦い)

ウクライナ東部ドネツク州の港湾都市マリウポリに停泊していたドミニカ共和国の貨物船 AZBURG がロシア海軍の砲撃により沈没した(NewsDirectReuters)。12名の乗組員は近くの船舶に避難したが、1名が負傷した。 AZBURG は2月23日にマリウポリに到着したが、ロシア軍が2月24日から海域を支配したためウクライナから離れることができなかった。

イタリア、デンマーク、スウェーデン、ラトビア、エストニア、スペインとロシアの関係

EU加盟国であるイタリア、デンマーク、スウェーデン、ラトビア、エストニア、スペインの6カ国は、ロシアの外交官を追放する(Politico)。

イタリアの Luigi Di Maio 外相は、「国家安全保障のため」30名のロシア外交官を追放することを発表した。

デンマークの Jeppe Kofod 外相は、ロシア大使館で働く15名のロシア情報局員を「国家安全保障上の脅威」として追放するとツイートした。

スウェーデンの Ann Linde 外相は、「違法な諜報活動を行っている」として3名のロシア外交官を追放すると発表した。

ラトビアの Edgars Rinkēvičs 外相は、ダウガウピルスとリエパーヤにある2つのロシア領事館を閉鎖することを発表した。 「これらの総領事館の外交職員は、ラトビアにおいてペルソナ・ノン・グラータ9となった」と述べた。13名のロシア外交官が追放される。

エストニアは、7名の外交官を含む14名の職員を領事館から追放した10。 追放された職員は、4月30日までにエストニアから出国する必要がある。

スペインの Jose Manuel Albares 外相は、25名のロシア特使を追放すると発表した。

ポルトガル、ルーマニア、スロベニアとロシアの関係

ポルトガルは、10名のロシア大使館職員をペルソナ・ノン・グラータ9とすることを発表した(TASS)。

ルーマニアは、10名のロシア外交官をペルソナ・ノン・グラータ9とすることを発表した(National Post)。

スロベニアは、33名のロシア外交官を追放することを発表した(Al Arabiya)。

トルコとウクライナの関係

ウクライナにあるトルコ大使館は、チェルニウツィーからキーウに戻った(Anadolu Agency)。 トルコ大使館は、ロシア・ウクライナ戦争の影響により一時的にキーウからチェルニウツィーに移っていた。

ダルフール大虐殺

スーダン西部のダルフールにおける大虐殺の容疑者の一人である Ali Kushayb の裁判がオランダの国際刑事裁判所で開始された(Deutsche Welle)。

ダルフール大虐殺は21世紀最初の大虐殺(genocide)で、2020年春の時点で48万人以上が殺害されたとみられている11

2022年のペルー抗議運動

ペルーの Pedro Castillo 大統領は、燃料と肥料価格高騰に対しての抗議運動の最中、首都リマと港湾都市カヤオで夜間外出禁止令を出した(BBC)。 Castillo 大統領は、非常事態宣言も発令しており、集会の自由や流通の自由のような一部の権利を停止した。

「法の支配」条件規制

欧州連合(European Union、EU)はハンガリーに対し、「法の支配」の原則を守らない加盟国へのEU予算割当を停止するという新ルールの手続きを開始すると発表した(Politico)。 この発表はハンガリーの Viktor Orbán 首相が4期連続の勝利となった選挙の2日後に行われた。選挙の公平性が疑われている。

エマーム・レザー廟

イラン北東部の都市マシュハドにあるエマーム・レザー廟でイラン人聖職者2名が刺殺され、1名が負傷した(Radio Free Europe)。 犯人の身元は判明していない。


  1. 2011年のアラブの春により生じたリビアの反乱のこと。 ↩︎

  2. Mali - Independent Mali | Britannica ↩︎

  3. ヒューマン・ライツ・ウォッチとは | Human Rights Watch ↩︎

  4. Burkina Faso - Independence | Britannica ↩︎

  5. Combating Banditry in Northwest Nigeria - American Security Project ↩︎

  6. Background | MONUSCO ↩︎

  7. NWS Little Rock, AR - What is a Tornado Emergency? ↩︎

  8. 2022年4年3日の世界のできごとを参照。 ↩︎

  9. persona non grata のこと。ラテン語で「歓迎されない人物」という意味だが、外交官の外交特権を取り除くために使う外交用語。外交関係におけるウィーン条約の第9条で、外交官を受け入れる側の国は理由を説明することなくいつでも外交官を persona non grata に指定することができると定められている。その場合、派遣国はその人物を呼び戻すか解任する必要がある(参照: Vienna Convention on Diplomatic Relations - e Diplomat)。 ↩︎

  10. Estonia expels 14 consular staff of Russia and closes Russia’s consulate general in Narva and Tartu office | Ministry of Foreign Affairs ↩︎

  11. Sudan – Darfur « World Without Genocide - Making It Our Legacy ↩︎